「不動産法律セミナー(東京法経学院出版)」に掲載された文章です。
(2001年1月号P107〜108掲載)                        

異業種交流会「Tokyo士’s」presents

資格の休憩室

-気楽に読む実務こぼればなし-

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『すぬぴの新米事務員バタバタ日記』
 司法書士・行政書士資格者 すぬぴ(今野智喜)

【まえがき】
 新天地八戸市(この地には地縁も血縁もありません)でまったく新しい仕事。合格時の知識もすっかり忘却の彼方……。右往左往・試行錯誤・五里霧中といった四文字熟語の毎日。そんな日々の一部を紹介します。

○月×日(△曜日)
 法人の破産の申立を手がけているというので債権者の一覧表を作った。取引先の一覧表みたいなものである。はじめて使ったパソコンソフトであったが,なんとか操作をした。10年以上パソコンを使っているが,仕事で使ったのは初めてに近い。前はパソコンの知識が使える職場じゃなかったからね。「芸は身を助く」だね,と思った…って,パソコンは「芸」か?

○月×日(△曜日)
 今日は,自己破産をしたいというAさんと会った。他の事務員からの引継である。個人の自己破産は事務員の方で添付書類のチェックをすることが多いし,事情を聞くこともある。しかし,まあ,何を聞けばよいのかよくわからんので,困った,困った。もちろん「多重債務に至った経緯」を聞けば良いのだけど,そうは言ってもなかなか難しい。いろいろ聞いたと思っても,あとでチェックしてみると「ありや?この時期の借金はどうして増えたのやら?」ということが多い。こういうのは経験がものを言うんだろうねえ〜。

○月×白(△曜日)
 Bさんが個人の自己破産の相談に来るという。その相談に初めて最初から立う会うことになった。いろいろな手続上の説明は先輩の事務員にやってもらった。ふむふむ,こういう感じで説明しないといかんのだな,と思う。弁護士も交えてお話をしたが,最後に弁護士が「すぐに受任通知を債権者に出しておいて。早めに申立できるようにしておいて」と言われる。「早めに」ってどのくらいの期間で申立の準備ってできるのかな?
 住民票や戸籍謄本は申立人が役所に行けばもらえるわけだから,それは問題ないのだろうけど,申立人が書く「陳述書」をちゃんと書いてくれるかが心配。それ以上に申立書の下書きを自分が担当するので,それを期間内に書き上げられるかが心配である。何回かBさんに事務所に釆てもらって事情を聞かないといけないんだろうな。

○用×日(△曜日)
 Cさんの自己破産申立に添付する書類として,不動産登記簿謄本を付ける必要があることがわかった。Cさんに取ってきてもらっても良いのだけど,こっちで準備することにする。といっても,指導校の勉強だけで合格したもんだから,謄本の取り方がわからなかった。というわけで,司活書士部門で謄本の取り方を教えてもらう。補助者経験もなく指導校の勉強だけの合格者ってちゃんとやっていけるのだろうか?と自分のことを棚に上げて思ったりする。でも,日本司法書士会連合会や各司法書士会の研修があるのだから,そういうものに出ればなんとかなるのかな?と勝手に思う。自分は研修を受ける前に勤め始めたからなあ,わからないことだらけである。

○月×日(△曜日)
 破産関係ばっかりだったのだけど,事務所に「公正証書遺言を作って欲しい」という依頼があり,その事務の担当となる。そういえば,遺言って試験に良く出たな。遺言ってする人いるのかな?なんて試験の時は思ったけど,やっぱり依頼する人はいるのだ。
 噂によれば,遺言書を作っておくと長生きするらしい。自分も自筆証書で良いから遺言を作って長生きしよう!と決意したのだが,資産がないので書くことがない。断念する。

○月×日(△曜日)
 支払督促申立の担当になる。債権額が少ないので,弁護士が代理人にはならずに書類作成だけするそうな。なんで弁護士部門に来たのかな?と思ったら,弁護士の顧問先とかそういう感じらしい。単に「貸金を返せ!」というような事件ではないので,ちょっと法的構成を考えてしまう。それに加えて,時効が近い。明日までに依頼者に渡さないといかんような……。時効の中断や支払督促の条文を確認してみた。申立すれば時効中断だね。試験でやったような気もする。自分が合格したときは支払命令だったなあ。

○月×日(△曜日)
 先輩の事務員が「相続財産管理人」の事件をやっていて,登記のことを聞かれた。例の「亡何某相続財産」ってする登記である。「相続財産管理人」って仕事あるんだなあ〜と,これまた妙に感心したりして。相続人が行方不明というわけでもなく……被相続人の負債が多くて,相続人全員が放棄してるというような事案ばっかりだ。全部の不動産が売れるまで「相続財産管理人」の仕事は続くんだろうな。こりゃ,大変そうだ。

○月×日(△曜日)
 前にやった支払督促が異議申し立ての期間内に「債務者からの異議申し立てもなく,支払もない」ということになり,仮執行宣言の申立もすることになる。しかし,執行するものあるのかな?とか思ったりもするけど……試験じゃ1問しか出ないけど,実際は債権を回収しないと意味がないわけだから,執行は重要。でも,すっかり忘れているので,受験時代に使った本を読んで確認。う−む,やっぱり忘れてる。忘れていることを確認しただけであった。

○月×日(△曜日)
 相続開係のからみで,相続関係説明図を作ることになった。戸籍謄本は集まっているし,メモ書きの相続関係説明図はあるので,とりあえず清書しながら戸籍謄本の確認をしていく。それだけでは意味がないので,最初の依頼者が持ってきたであろう戸籍(普通に役所でもらえる戸籍)から,どのようにして先祖の戸籍につなげていくのか戸籍の読み方を覚えながら進む。当然,先祖の戸籍は旧民法・旧戸籍法で作られたものなのでなかなか読み応えがある。戸主の戸籍に一族みんな入っていたりするのだ。「姪」とか「叔父」とか。さらには「叔父の妻」といった戸主とは血が繋がってない人も戸籍に入れるのであった。三世代分だけど,パソコンで相続関係図を作ると子だくさんなので,横に広がってB4で4ページ分になった。つなぎ合わせると,まるで巻物!縦に吊すと掛け軸!なんだかすごいなあ〜。

〈フロフィール〉
 昭和61年度行政書士試験合格,平成9年度司法書士試験合格。司法書士試験合格当時は,ある業界の営業マンをしていて,合格後もそのままその会社に勤務していました。しかし,ひょんなことから平成12年3月に法律実務の道に進むことを決意し,12年間住んでいた東京を離れ,青森県八戸市にある「たいよう総合法律経済事務所」の事務職員(現在は弁護士部門)として勤めるようになりました。現在,@niftyライセンス資格試験フォーラム法務系会議室副議長。なお,「すぬぴ」とはパソコン通信等に使用しているハンドルネーム(ニックネームみたいなもの)です。
(http://member.nifty.ne.jp/sunupi/)