| TAC株式会社発行 「TACNEWS
2002 Apr.(P10〜P18)」に掲載された、当事務所の記事です。本文及び画像は、冊子掲載のものを引用・転載しました。 |
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最近よく聞かれる言葉に「ワンストップサービス」がある。これは言葉通り、消費者が「一つの場所で必要とするすべてのサービスが受けられる」という意味で使われているわけだが、資格との関わりからみると、いわゆる総合法律経済事務所ということになる。ただ、ほとんどの資格は「資格者たる一個人に付与」されるものであり、異なる種類の資格者が同じ場所でサービス提供を行うという図はちょっと考えにくい。ところが25年以上前の1976年1月よりワンストップサービスを標榜し、取り組みを続けてきた事務所がある。それは青森県八戸市の「たいよう総合法律経済事務所」である。今回は、同事務所の歩みとともに、話題の総合法律経済事務所の可能性について探っていただきたい。 |
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〇総合事務所って何?
TACNEWSの読者なら総合法律経済事務所(以下総合事務所)、あるいはワンストップサービスという言葉を、耳にしたことがあるのではないだろうか。では総合事務所とはどういうものか、というとピンと来ない方が多いのでは。というのも、それを標榜している資格者の事務所はあっても、現実に実体が伴っているところは未だほとんど見当たらないからなのである。
総合法律経済事務所とは、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、不動産鑑定士、弁理士等、その業務が隣接すると思われる資格者が一つの事務所に集まって、活動する事務所のことである。つまり依頼者は一つの事務所に頼むだけで、法律、税務、労務、不動産等といった問題を、それぞれの専門家のアドバイスを得ながら解決することができるのである。依頼者サイドに立って考えてみると、たいへん便利なものではないだろうか。
では、実際に資格者サイドの対応はといえば、公認会計士には「監査法人」がある。しかしこれは監査を適切に行うことを目的にしたもので、投資家保護という観点はあるが市井の人との直接の関係は非常に薄い。また、この4月からスタートする税理士法人は、税理士としての専門分野をより深く掘り下げ、かつ事務所としての継続性について期待されているが、どちらかといえば専門性に重点がある。それに対して総合事務所は、必要とされる専門家を一同に集めることからスタートするので、専門性よりは総合力に主眼を置いたものと考えられるのである。
では、依頼者にとっては便利に見える総合事務所が、なぜあまり存在していないのだろうか。それは資格そのものが、あくまでも「一個人に対して与えられる」ものであり、各資格者の独立性、独占業務の範囲等の観点から、異なる資格者同士が共に仕事を行う総合事務所は認められないものとされていたからである。これは各資格者に関連する各省庁や資格者団体も同様の見方をしていたのである。
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〇規制緩和が資格の世界にも
そうした考えに変化が現れてきたのは、いわゆる規制緩和の影響である。政府による行政改革委員会・規制緩和小委員会において、1998年に「総合法律経済事務所」の可能性が言及されたのである。これを受けて、法務省、大蔵省(現財務省)等の関係省庁では、1999年に当時の法務・大蔵・通産3省の合意として「現行法上でも、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士等が揃った総合的法律・経済関係事務所の開設は基本的に可能」とする意向を表明している。つまり、総合法律経済事務所に関して「問題なし」としたわけである。同じ1999年5月にlま、経団連が「司法制度改革についての意見」というかたちで、この総合事務所について「中堅以下の企業や個人事業者についてはニーズが高い」とし、「出来るだけ早く認めるべき」という支持の姿勢を表明したのである。さらに2001年6月に出された司法制度改革審議会の意見書(最終答申)では、総合的法律経済関係事務所について、「ワンストップサービス(総合的法律経済関係事務所)実現のため、弁護士と隣接法律専門職種などによる協働を積極的に推進するための方策を講じるべきである」とされており、より踏み込んだ意見が提出されているのである。
規制緩和、時代の要請という一面はあるのだろうが、なぜ総合事務所が必要とされるのかについては、一般企業の活動を振り返ってみれば簡単に納得できる。なぜなら、企業活動に法律、税務等といった垣根はなく、それらをトータル的にとらえ一つの問題として解決しなければ企業活動自体に支障が生じるケースが非常に多いからである。例えば新しく店舗を出そうとした場合、そこには法務、不動産、労務、税務等といった事柄が絡み合って存在している。それらを解決するために個別にはそれぞれで検討するが、店舗という課題に対してはトータルとして検討し解決していかなければならないのである。すると企業がこうした問題を相談する先、つまり資格者にも総合化を望むことは当然といえよう。全体を捉えながら、個別事案に対して専門家が解決に当たるというスタイルである。もちろん企業は、トータルサービスによるコスト面のメリットに対しても当然期待していると考えられる。
一方で、資格者の現状はどうだろうか。社会が複雑化・高度化することにともない、一つの資格の中でも専門分野が発生している状況を考えると、依頼者の相談に対して、適切に応えていこうとしたら、隣接する資格者、あるいは専門分野を異にする同じ資格者と手を結ぶことは自然の流れと言える。それをどんなかたちで行っているかだか、今までは提携というかたちが多く、依頼者にこの専門分野については、この資格者に聞いて欲しいと紹介する方法である。つまり、依頼者は一つの資格者から別な資格者へと同じ相談を持って回らなければならないのである。という現状を考えると、なぜ一つの場所にいないのだろうか、と誰しもが考えるのではないだろうか。それが、総合事務所なのである。
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〇八戸にある先駆的総合事務所
先程、総合事務所はほとんどないという表現を使ったが、実際には新しくそうした動きを始めている資格者も大勢いる。しかし、なかなか理想的なかたち、あらゆる資格者が揃った事務所になっていないのが現状である。そんな中、先駆的な総合事務所が青森県八戸市にある。それは「たいよう総合法律経済事務所」である。
たいよう総合法律経済事務所は、現在、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、測量士補、建築士らが参加している総合事務所である。代表は、弁護士の大澤一實氏、会長は事務所設立者でもある司法書士・土地家屋調査士・行政書士・2級建築士の 工藤力氏が務めている。
事務所のスタートは1976年1月、当時、土地家屋調査士・行政書士であった工藤氏が、司法書士の成田實氏と法律関連業種共同事務所として設立したことに端を発している。当時の様子を工藤氏はこう語っている。
「私自身は1973年から土地家屋調査士として仕事を始めていましたが、一つの資格では出来る仕事範囲がどうしても狭く、お客様のご相談にお応えしようとすると、すぐに資格の垣根にぶつかってしまうのです。特に土地家屋調査士の場合、独占業務の範囲が狭く、余計にそう感じたのかもしれません。そこで解決策として司法書士の成田と共同で事務所を始めたのが、今日に至るきっかけです。
最近でこそ、政府の見解もあり、資格者同士の垣根もだいぶ低くなりましたが、始めた当時は、業界にそぐわない形態として異端視され、どうやってもうまくいくはずがない、といわれていました。同業の資格者、もちろん隣接の資格者の抵抗も大きく、決して歓迎されてはいませんでしたね(笑)」(工藤氏)
工藤氏は笑いながら当時を振り返るが、業界からはかなりの抵抗があったようだ。そんな業界の閉塞感を打ち破るベく、さらに総合事務所のメリットを啓蒙すべく、工藤氏は後に取得した司法書士を始めとする資格者団体における活動を積極的に行ったという。
「誰もやっていないことですから、みんなわからないのですよ。少しでも知ってもらえれば、そして総合事務所を可能にする法律的な裏付けにつながっていけばと考え、会の活動には積極的に参加しました。ただ、当時の会の考え・指導では、共同事務所は出来ないもの、となっていたと記憶しています」(工藤氏)
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〇様々な資格者がどんどんと参加
その後、工藤氏が始めた共同事務所には行政書士、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士らがだんだんと参加し、現在の姿へと成長していくことになる。
現在、代表を務める弁護士の大澤氏が参加したのは1997年のこと。大澤氏は自ら開いていた大沢法律事務所を閉鎖して、参加したのである。
「会長の工藤と知りあって、いろいろな話しをしているうちに、私もそして工藤も予防司法を目指しており、その観点から考えると、総合事務所として一緒にやるメリットが非常に大きいと考えました。その後、一緒に仕事は行っていましたが、なかなか事務所を一緒にするタイミングが難しくて、1997年、私が青森県弁護士会の会長を務めさせていただいているときに、思い切って自分の事務所を閉鎖して、こちらに参加しました」
と大澤氏は参加へのいきさつを語っている。そして総合事務所への参加にあたっては依頼される案件が内容的に変化してきたことも要因であるという。
「以前は依頼者の方が直面するいろいろな問題は、それほど複雑ではありませんでした。社会が高度化し複雑さを増すことに伴って、問題も複雑化し、資格横断的な内容が増えてきたのです。これは時代の流れといってもいいかも知れません。だからこそ総合事務所であることが必要になってくるのです。
例えば弁護士は登録すれば税理士業務も出来る、といっても現実に税務のことはわからないわけです。すると別々に事務所を持っていれば、税務については税理士事務所に改めて出向いていただく必要があるわけです。これは登記など司法書士にお願いすることでも同様です。そして相談にみえる方すべてが、ご自身の口からご自身の抱えている問題を正確に話せるか、といえば決してそんなことはありません。わからないことがあったり、因っているからこそ相談にいらっしゃっているわけですから」(大澤氏)
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〇参加者が事務所を探してやってくる
たいよう総合事務所が総合事務所としてのスタイルを確立するにつれ、大澤氏らとは少し異なる、新しい参加理由を持った資格者も現れている。
その一人は税理士の中道浩悦氏。中道氏は、東京で勤務税理士として仕事を行っていたが、地元である八戸へ戻るにあたり、最適な方法を検討したところ出て来たのがたいよう総 合事務所への参加だったという。
「東京ではもちろんですが、八戸でも新参者が一人で独立してやっていくのは環境的には、厳しいものがあります。そこでどのような方法で税理士という資格を生かして仕事をする道があるかを探りました。その中で出てきたのが、たいよう総合事務所です。内容を知るにつけ、東京にもない理想的な環境だと考え、入れていただけるようお願いしました。資格者ですから、独立して一人で、ということももちろん検討しましたが、今までの経験からお客様のニーズ等を考えてみると、到底一人では対応できないと判断したことも大きな理由の一つですね」(中道氏)
こうして中道氏は事務所の門を叩き、税理士として参加し、今日にいたっている。
中道氏は出身が八戸であり、地元に帰るといった事情がベースにあったのだが、変わり種としては司法書士の今野智喜氏がいる。氏はもともと横浜で仕事をしていたのだが、インターネットでたいよう総合事務所のことを知り、参加を表明し、2001年4月に本当に参加してしまったのである。八戸とは縁もゆかりもない今野氏だが、たいよう総合事務所のコンセプトに共感して、八戸に生活のベースそのものを移しての参加だけに、まったく新しいスタイルと言えよう。
例えば大澤氏らのように、同じ八戸をベースに資格者として活躍しており、それぞれが仕事を通じて知りあい、共同で仕事を行うことから考え方に共感し、事務所に参加したケースを第一世代と仮に呼ぶなら、中道氏や今野氏は、たいよ う総合事務所がすでに地元に根づいたうえに立っての参加であり、第二世代といえる存在かもしれない。
さて、ほとんどの資格者が揃っているように思えるたいよう総合事務所だが、実は社会保険労務士だけが参加していない。
「私共の認識が甘く、今までは実際に資格として成り立っていけるだけのニーズが八戸にはないのではと思いこんでいたのです。したがって、積極的に参加を求めなかったというわけです。今後、人の問題、人事・労務は今以上に大切になることは必至ですから、いい方がいたら参加していただきたいという思いが強いのですが」(大澤氏)
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〇総合窓口から各専門分野へ
さて、様々な資格者が活躍するたいよう総合事務所だが、組織はどのようになっているのだろうか。基本的には各資格別に業務窓口が分かれており、それとは別に全般相談窓口がある。
業務部門としては、
・公認会計士・税理士業務/監査・税務手続、税務・会計
・司法書士業務/登記業務、裁判所手続
・土地家屋調査士業務/測量・分筆登記、建物表示登記
・行政書士業務/開発許可・調査、諸官庁手続
・弁護士業務/訴訟手続、法律相談
・弁理士業務/特許・商標申請
となっており、これら個別窓口とは別に電話相談並びに不慣れな来訪者の便宜の為に一般的相談窓口部門を工藤氏が受け持っているのである。
「相談に見えられる方が、私は法律の相談、とはっきりしている場合は別ですが、内容的に複数の資格に渡っていたり、また、相談にみえても明確に何の相談、とわかっていらっしゃらない場合もあります。何か問題が起きていることはわかっても、それをどんな人にどう相談したらいいのかがわからない。そういう場合は、私の方でお話をお聞きして、ご相談内容を明確にした上で、各業務部門に繋いでいきます。もちろん、最初から複数の資格者が必要だという場合もありますが、メインは何か、これが依頼者には意外とわかりにくいものです。それをはっきりとさせてあげることも私の仕事の一つですね」(工藤氏)
「そして、メインは法律の問題となったら私たち弁護士部門でご相談をお受けするわけです。ご相談の中に、例えば相続問題で税務に関することがでてきたら、私はここから中道に内線をかけて、時間があればすぐに同席してもらい一緒に相談にあたります。例えば案件の説明をするにしても、依頼者がゼロから鋭明するのではなく、私なり他の弁護士が案件のポイントを絞って説明しますから、論点が明確になり、他の資格者の方にもわかりやすく説明することができます。ですから依頼者は短時間で複数の資格者から有益なアドバイスを受けることが出来るのです。以前なら、税理士さんを紹介しますからと言って、その場で電話をかけても、依頼者が税理士さんにお会いできるのは数分後ではなく数日後です。それも依頼者の方が一人で税理士さんの元へ行くわけですから、そこでまたゼロから依頼内容を説明しなければなりません。論点がずれて伝わることだってありうるのです。こんなちょっとしたことだけでも、総合事務所がいかにメリットがあるかおわかりいただけると思います」(大澤氏)
「私もそういうかたちで一緒にご相談にのらせていただいています。もちろん、税務が中心であれば、私がメインでご相談に応じています。ただ、総合的な相談が多いせいか、私の扱う内容も、単に税務のみというよりは、法律問題も関係した相続の案件がどちらかといえば多いですね」(中道氏)
こうしたかたちで、たいよう総合事務所では、ファジーな相談も工藤氏が窓口として機能してあらゆる相談を受け付け、具体的な相談等を各資格者が対応するかたちとなっているのである。
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〇試行錯誤と資格者ゆえの苦悩
さて、こうして紹介していると何の波風もなく(業界の抵抗は別にして)、たいよう総合事務所が成長してさたかのように感じた読者もいるかも知れないが、実際には決して平坦な道のりだったわけではない。
業界の抵抗については、工藤氏はじめ皆笑って話しており、厳しく言及はしていない。しかし、それぞれの資格ごとに周囲の対応は異なっても、一様に異分子に対しての厳しい反発があったようだ。
「何と言っても初めてやることですから、何のお手本もないわけです。だから試行錯誤の連続でしたね。現実問題として、以前よりはやりやすい環境になりつつあっても、試行錯誤であることに変わりはないでしょう」(工藤氏)
と語るように、道を切り拓く者たちにとっては、易き道などはないということのようだ。また、新たな試みの中には途中で挫折したものもある。
「1984年に八戸市内の資格者を集めて、一緒に仕事ができるようにということで法務データサービスという会社を作りました。これは金融機関からの依頼で調査をする会社で、その中で横断的に問題の解決をしていこうというものでした。具体的には土地に関しての様々な情報を一堂に集約して、それをベースにいろいろな仕事に結びつけていこうと考えました。
しかし、うまくいかなかったですね。1年間持たずに空中分解しました」(大澤氏)
その原因は、やはり別々な事務所で仕事をしていれば、一緒にやる仕事はあくまでもサブの仕事にしかならなかったということであり、参加した資格者は自らの事務所に重点を置いての活動から、法務データサービスを中心とした活動にはシフト出来なかったのである。
資格者は一国一城の主を目指して資格を取得した方がほとんどと考えられるだけに、これは無理からぬことでもある。
「そこで改めて感じたことは、共同事務所もあくまでも参加している資格者が事務所全体を自分の事務所として認識し、運命共同体にならないといけないということです。そうでないとうまくいきません。
ただ、私はたいよう総合事務所のコンセプトとして、来るものは拒まず、去る者は追わず、だと思っています。無理やり一緒にといっても現実的には難しいですし、無理強いして一緒にやっていくものでもないと思います。だからいつも門戸は開かれています。もちろん、パートナー全員が承認しないと参加はできませんが」(工藤氏)
法務データサービスの失敗は、事務所にも大きな教訓を残したようだ。そのためか、それとも工藤氏や大澤氏の性格なのか、無理をしてまで一緒にやろうという考えはないようである。異なる資格者同士がそれぞれの専門分野を活かしながら、自然と一緒に仕事をしていく。だから、一緒にやっていくことが難しくなった資格者をあえて引き留めることはしないという。
「残念だったのは、以前は1級建築士の方もいらっしゃったのですが、どうも違うようだとのお考えで離れていかれました。今でも、案件によっては意見を求めたいこともあるだけに残念ですね。ただ、工藤が2級建築士を持っていますので、だいたいのことはわかるのですが」(大澤氏)
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〇税理士が事務所運営のキーとなる
さまざまな苦労を経て、今日の姿に成長しているたいよう総合事務所だが、スタッフや経費といった問題については、どのような対応をしているのだろうか。
「これはあくまでも私の印象ですが、お金に関しては執着しない方がほとんどだと思います。逆に執着すると自分自分となってしまい、やはりうまくいかないのではないでしょうか。みんなが一つの事務所で、先程、工藤もお話ししたように運命共同体としてやっていこうという考えがないと、バラバラになってしまうのでしょうね。
お客様に対しても、事務所の方針としても『市民の要望に対し迅速かつ的確に、そして合理的費用で』ということを前面に打ち出していることからも、その辺りのことがご理解いただけるのではないでしょうか。
実際の経費の面についてですが、経費の合同については、認められていますが、収支の合同は認められていません。収支も合同してというかたちが本来的だとみんな感じていますが、現在の法律に則って進めていこうとすれば、それは出来ません。なんといっても法律や税務等をベースにした資格者の集まりですから、法律を遵守して、その中でベストを尽くそうという考えで運営しています」(中道氏)
一般企葉で考えれば、様々な部門でそれぞれに売り上げがあって、それが一つにまとまって会社の売り上げとなり、そこから経費や人件費が支払われるのだが、総合事務所は資格者の集まりだけに、収支に関しては法律に則ってそれぞれの資格者ごとに行う必要があるのである。
「だから、といっては変ですが、税理士や公認会計士といった税務、会計の専門家の関与なしではとうてい組織としての運営は出来ません。数字面できちんとバックアップしていただけないと、正しい運営は難しいということです。実際の仕事としての案件はもちろんとして、自分たちの事務所運営に関しても、税理士、会計士は欠かすことが出来ないですね。うちの事務所には資格者の皆さんがよく見学に訪れるのですが、メンバーに税理士や会計士がいない場合は、かなり困難であるという話しを必ずします」(工藤氏)
どんな組織であっても、それが資格者の集まりであっても会計、税務という問題は本当にベースとなるものなのだろう。
では、スタッフに関してはどんなやりかたをしているのだろうか。
「スタッフに関しては、全員が派遣スタッフです。実は別会社で(株)たいようヒューマンネットワークがあり、そこに登録している方を派遣していただいているのです。というのも、扱うそれぞれの専門分野によって繁忙期が異なりますし、一資格者が個別に雇用している関係だと、スタッフ全体の給与や福利厚生といった面がバラバラになってしまい、せっかく一緒に働いていただける皆さんに対して平等に相対することが出来ません。そこでお客様からも要望があり、別会社にして人材派遣、人材紹介、経営コンサルティング、アウトソーシング、起業家支援、自己啓発支援といった事業を行っています。こちらは税理士の城前由美子が社長を務めています。また公認会計士の小山信が行う経営コンサルティングもこちらを通じてのケースが多いですね」(大澤氏) |
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〇もっと全国に総合事務所を
多彩な活動を続けるたいよう総合事務所だが、今後の展開については、どんな方向を目指しているのだろうか。
「まず一つ目としては、さらに多くの資格者に参加していただけるよう、内部体制を含め増強していきたいと考えています。先に話が出た社会保険労務士の方の参加も今後検討していきたいですね」(工藤氏)
「1年以上前になりますが、2000年10月に弁護士の源新明が弁理士登録をしました。理由としては、青森県には弁理士がいなかったからなのです。やはり知的所有権、特許や商標というものをきちんと権利として確立し管理していかなければなりません。そうしたまだ手を付けていない分野が他にもあると思いますが、そうしたところにも総合事務所としてきちんと対応できるようにしていきたいと考えています」(大澤氏)
組織としての充実、さらにはより一層の総合化が一つの課題のようだ。では、総合事務所としての組織についてはどんな考えなのだろうか。
「私たちたいよう総合事務所に参加している資格者としては、本当の意味で一緒に、運命共同体としてやっていきたいと考えています。しかし、現行法のもとでは一緒に事務所を持つところまでしか許されていません。この4月1日に施行される弁護士法改正に基づき弁護士法人を設立できるようになりましたが、まずは弁護士法人を作り、法人と各資格者という関係に持っていきたいと考えています。もちろん、みんなの願いとしてはすべてを一緒にできることなのですが……。そのためのステップとして弁護士法人をと考えています」(大澤氏)
資格はそれぞれに別な法律に基づいて認められている。そういう意味からは、すべてを一緒に出来るというまでにはまだまだ高い山があるのかもしれない。しかし、たいよう総合事務所では、法律に関しては遵守しつつ出来るだけ理想的な事務所作りを目指しているようだ。
最後に、各先生方から資格取得を目指す読者にメッセージをいただいた。
「私の経験からも総合事務所は大都市というよりも、地方都市型だと思います。東京都などは専門性を高めた事務所が密集しています。そういう意味では総合事務所がなくても、なんとかなると思います。しかし、地方だとそこまでの状況にはありません。高い専門性よりも、むしろ総合性の方が求められていると思います。
笑い話ですが、八戸支店に勤務していた方が別な都市に転勤になったとき、総合事務所がなくてびっくりしたそうです。私たちと付き合っているときには、一つの事務所でどんな相談でも出来ることが当たり前だったのに、新しい赴任先では出来ない。たいへんに不便しているというお電話をいただきました。
これから資格取得を目指す方も、総合事務所も就職先として検討してください。単に独立を考えるよりはずっとメリットがあると思います」(中道氏)
「事務所を組織として確立していくことと、事務所内から資格者が育って欲しいと考えています。この前、工藤の息子である工藤大介が土地家屋調査士の資格を取得しました。彼に続いてどんどん、事務所内から資格者が育って欲しいと思います。
また、若くして資格取得を目指される方も、ご自身の可能性を広げる意味でも総合事務所という選択肢も忘れないでください」(大澤氏)
「規制緩和や時代の流れによって、少しずつ総合事務所にフォローの風が吹いているかなぁ、という感じですが、実際にはまだまだと思っています。私としてはぜひ全国に総合事務所がたくさん出来て欲しいと思います。若い皆さんは、最初から同世代の仲間と総合事務所で始めるくらいの気概をもって資格取得を目指して欲しいですね」(工藤氏)
新しい資格者が時代の波を見誤らずに、新しい事務所像を模索していくなら、青森県八戸市から始まった総合事務所という新しい波が日本中に広がるにはそんなに時間はかからないだろう。 |
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2002 Apr.」に掲載された、当事務所の記事です。 |